2013年2月7日木曜日

連鎖する不幸「殺人鬼フジコの衝動」

殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)
真梨幸子

徳間書店 2011-05-07
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 こわかった!!  
 これもジャケ買い本です。こわかった…マジに怖かった…。化け物が出てきてこわい、とかでなく人間心理の怖さ。

●フジコの成長と共に登場人物が少しずつ消えていく
 物語はフジコが小学生の時からはじまります。父は酒浸り母も自分たちの面倒を見てくれないという最悪な家庭環境。
 小学生の女子のグループ抗争、高校生になって親友と彼氏が関係を持つ、結婚後夫の家族との同居…。物語が進むにつれフジコの年齢も上がっていきます。そして、親に愛されていない経歴を持つが故か、上手く人間関係を築けないフジコ。理想と現実との溝をつくる人物が少しずつ死んでいきます。フジコが殺す直接描写がないが故によけいこわい。後半では、前章ではいたはずの子供が何故か登場しなかったり。
 時々、フジコの夢か幻聴なのか現実に起こっているのか判別がつかない文章もあり余計にこわかったです。

●逃れられない運命
 「母の様にはなりたくない」と思うフジコがどんどん母の様になっていくのがこわかったです…。
 フジコが望んだのは「金銭的に恵まれ家族を大切にする優雅な生活」だったように思います。そのために邪魔な人間を消していったのにこの転落…。
 フジコの子供もまた、フジコのように気に入らない人間を助けないラスト。結局その人物は助かり、直接的な殺人ではないですが、人に粗末に扱われた人間は人を粗末に扱うようになるんだな、とそんなリアリティがあって怖い。
 買った店の紹介POPに「人間の憎悪に気分の悪く人は読まないでください」とあってまさにそんな本。

 こわい気持ちを味わいたい人におススメの一冊です。